2025年7月3日深夜0時15分、カンテレ×FODの社会派ミステリ『ロンダリング』第1話がスタート。売れない俳優・緋山鋭介(藤原丈一郎)は、他人の“非業の死”を背負う「霊聴」の能力を持つ。事故物件をめぐる日常とその裏に潜む死者の声――それらが静かに重なり合い、社会の闇へ導く。今回は「事故物件の怪異」と「死者の声に隠された真実」に迫る、導入編の構造と見どころを須賀啓介スタイルで深掘りします。
- ドラマ『ロンダリング』第1話の詳細なあらすじと展開
- 死者の声をめぐる社会派×超常の物語構造
- 主演・藤原丈一郎の演技と今後の展開の伏線
第1話のあらすじと事故物件の恐怖
霊聴を持つ緋山鋭介の悲哀
売れない俳優・緋山鋭介(藤原丈一郎)は、東京の片隅で細々とエキストラ稼業を続けている。
だが、彼の生活を蝕んでいるのは貧困でも不遇でもなく、“死者の声が聞こえてしまう”という能力だ。
ある日、彼の耳に届いたのは、ある高級マンションから聞こえる「助けて」という女性の声。
不動産仲介のバイトを通じてその部屋に近づいた彼は、死者の声に導かれながら“事故物件の真実”へと足を踏み入れていく。
霊聴という特異な力を持ちながらも、それを“金にも仕事にもならない”と忌避してきた鋭介。
彼の皮肉な日常が、この能力によって社会の闇とつながっていく皮肉が見事に描かれている。
“飛び降りた女”の真相と高級マンション
今回の舞台となるのは、一見なんの変哲もない都内の高級マンション。
しかし、その“事故物件”にはかつて女性が飛び降り自殺したという噂があった。
鋭介が聞いた“声”の正体は、その亡霊であり、彼女はただ死を伝えたかったのではない。
「なぜ死ななければならなかったのか」を語りたかったのだ。
誰にも気づかれない死、闇に埋もれた真実。マンションの隣人やオーナーとのやり取りを通じて浮かび上がるのは、
都市生活に潜む“無関心”という恐怖だった。
キャスト紹介と個性の輪郭
緋山鋭介(藤原丈一郎)—声に縛られた日常
主人公・緋山鋭介は、俳優を目指して上京したが芽が出ない“凡人のリアル”を背負った青年。
それでも諦めずに現場に立ち続ける姿勢には、不器用ながらも芯のあるキャラクター性がにじみ出ている。
そんな彼に与えられた「死者の声が聞こえる」能力は、祝福ではなく呪い。
彼は“見えない何か”に追い詰められるように、死と向き合わざるを得なくなる。
藤原丈一郎はこの難役を、決して誇張せず、むしろ“普通さ”を通じて違和感を際立たせる演技で見事に演じている。
初主演とは思えぬ安定感と等身大の痛みが、物語に深みを与えている。
蒼沢夏凜(菅井友香)—異変が“見える”能力者
事故物件の調査に関わるライター・蒼沢夏凜は、緋山とは異なる能力——“霊が見える”特性を持つ。
鋭介の聞いた“声”を裏付けるように、彼女は部屋の中で女の霊の存在を視認する。
視覚と聴覚、それぞれの違う感覚が交わることで、より深く死者の声を掘り下げていく構造が本作の魅力の一つだ。
夏凜の柔らかくも芯のある言動は、緋山にとっても「信じてもらえる存在」としての意味を持ち、今後のバディ展開にも期待が高まる。
謎のP.J.(橋本涼)—闇に潜む何者か
そして第1話終盤で姿を見せるのが、謎の存在「P.J.」。
金と情報を握りながら、死者と関わる“裏の稼業”を持つ気配を漂わせる。
彼の登場は物語を一気に動かし、鋭介の能力が「社会の裏側」ともつながっていることを予感させる。
死者の声が、事件と欲望の連鎖に絡む瞬間が迫っている。
ジャンル混在の構造——社会派×超常の狭間
「事故物件」と「社会の闇」の接点
一見ホラーやオカルトの要素が色濃く見える『ロンダリング』だが、その本質はむしろ「社会派ミステリ」に近い。
死者の声が語るのは、単なる霊的現象ではない。
誰にも気づかれずに社会から消された“声なき犠牲者”の存在である。
高級マンションの陰で起きた孤独死、表沙汰にされない労働トラブル、虐待、ハラスメント。
そうした現実の問題を、霊の声という“比喩”を通じて告発しているのが、本作の真のテーマだ。
霊の声を通じて描かれる“非業の死”のリアリティ
本作が描く“死”は、決して過激でもグロテスクでもない。
むしろその死が「日常に紛れて、何もなかったかのように処理されていく」ことこそが恐怖なのだ。
鋭介が聞く声は、誰かの心の叫びであり、社会が聞くことを拒んだSOSである。
それを拾い上げる彼の存在は、“死者の代弁者”であると同時に、この世界の不平等を照らすランプでもある。
つまり『ロンダリング』とは、死者が語る“もうひとつのニュース”であり、
私たちが見落としがちな現実を映し出す鏡のような作品なのだ。
演出家の手腕──映像と音響が映す不安
無音と声のコントラストによる恐怖設計
第1話を通して際立っていたのは、“無音”の演出だ。
霊の声が届く直前、画面がまるで呼吸を止めたように静まり返る。その直後、鋭介の耳にだけ届く「助けて」の囁き——
このコントラストが、恐怖を情緒として印象づけている。
ホラー演出にありがちな驚かせ方ではなく、「なぜこんなに静かなんだろう」と思わせた時点で
不安の伏線が敷かれている。そんな“音の設計”が巧妙だ。
藤原丈一郎の初主演が生む“等身大の苦悩”
初の連ドラ単独主演となる藤原丈一郎は、強い個性を主張するのではなく、状況に呑み込まれ戸惑う普通の青年を丁寧に演じている。
死者の声に怯え、逃げたくなりながらも、誰かの“真実”を背負わざるを得ない。
その揺れは、視聴者の“もし自分が…”という没入感につながっている。
演出面では、藤原の表情を過度にアップにしないことも功を奏しており、
感情の“微差”を映すカメラワークが、彼の等身大の演技を支えている。
今後の展開を示す伏線群
事故物件が連鎖させる“次なる声”の予兆
第1話の終盤、緋山の耳には新たな“声”が届く。その場所は、また別の事故物件。
この流れは単なるエピソードの区切りではなく、“死者の声をたどる連鎖構造”がシリーズを貫くことを示している。
つまり、本作は「1話完結型のミステリ」ではなく、“都市に散らばる異常死の真相”を串刺しにしていく連続物語。
一つの声が次の声を呼び、やがて大きな構造的真実へとたどり着く――その起点が、すでに第1話で提示されているのだ。
登場人物たちの関係性と潜む秘密
緋山と夏凜、そして謎の存在P.J.——この三人の交差が今後の鍵を握る。
特にP.J.は「死者の声に価値を見出している」ようなそぶりを見せており、
霊能力が金や情報と結びついたとき、物語は倫理の領域を超えていく。
また、夏凜の過去にもまだ明かされていない秘密があるようで、彼女がなぜ霊を“視る”ことができるのかも伏線として配置されている。
第1話は序章に過ぎず、声なき死者と生者の因縁が、これからより濃密に絡まり合っていくことは間違いない。
- 第1話は事故物件の“声”が導く導入回
- 緋山鋭介は死者の声を聞く青年
- 飛び降り女性の霊が語る社会の闇
- 視覚と聴覚、能力者のバディ構造
- ジャンルはホラー×社会派の融合型
- 無音と囁きで恐怖を構築する演出
- 今後は“声の連鎖”が核心へ繋がる
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