2025年6月7日放送の『黒執事 -緑の魔女編-』第10話「その執事、掃討」。
この回はまさに、“緑の魔女編”の核心に手をかける回でした。
シエルの窮地に現れるのは、父ヴィンセントの親友・ディーデリヒ。彼の登場が、呪われた「狼の谷」の真実を暴き出していく——。
そして、サリヴァン。彼女が“知ってしまったこと”は、幼い少女にはあまりにも重たく、あまりにも残酷でした。
しかし、それでも彼女は前を向く。自らの天才性を、破壊ではなく救いに使うために。
これは「罪」と「赦し」をめぐる祈りであり、「選択」の物語。
“魔女伝説”のベールが剥がされる瞬間に、私たちは何を思うのか。
深い闇の奥で、それでも希望は微かに灯る——。
- 「緑の魔女編」の呪いや人狼伝説の真相
- サリヴァンが抱える罪と希望の物語
- セバスチャンとシエルの“決断”の哲学
ディーデリヒの登場と「狼の谷」の真実
第10話の幕開けは、命を落としかけたシエルを救うディーデリヒの登場から始まります。
彼はかつて父ヴィンセント・ファントムハイヴと深い信頼関係にあった男であり、その忠義がいま、主人の息子を救う行動となって現れるのです。
血筋を超えた“継承”のドラマが、ここで静かに動き出す瞬間に胸が熱くなりました。
父の遺志を継ぎ、シエルを救う“信義の男”
ディーデリヒはただの助っ人ではありません。
シエルの父が背負った“裏の世界”を共に歩んだ者として、真実を暴き出す使命を持つ人物です。
彼の調査力、そして執念が「呪い」とされた伝承に風穴を開けていく様子は、『黒執事』らしいインテリジェンスと陰謀の交差そのものです。
「呪い」の正体は、軍が生んだ毒ガス兵器だった
長年「人狼の呪い」や「緑の魔女の魔法」とされてきた森の瘴気。
その正体は、なんと軍が極秘裏に開発した毒ガス「マスタードガス」であることが判明します。
人狼とされた存在は、ガスマスクをつけた軍人たち。村の人々も“魔女伝説”の演出要員にすぎなかったという衝撃の構造。
これはまさに、科学と軍事が「信仰と呪術」を利用した象徴的な欺瞞であり、私たちが信じてきた物語の根底が揺らぐ瞬間です。
サリヴァンの覚醒と“サリン”の罪
このエピソードの核心は、サリヴァンが自らの才能と過去に向き合う覚醒にあります。
これまで“森に閉ざされた少女”だった彼女が、母と軍の計画、そして自分自身の行為の意味を知ることで、一人の科学者として新たな選択を迫られるのです。
その心の揺らぎと、決断の尊さに胸を打たれました。
天才が背負った“無意識の罪”
サリヴァンは知らぬ間に、軍の毒ガス兵器計画に加担していました。
彼女の母は軍の研究員であり、サリヴァンはその才能を利用される形で“サリン”の合成法を完成させてしまっていたのです。
それを知った時の彼女の表情、震える声、涙――そこにはただのキャラクターではなく、苦悩する一人の人間の姿がありました。
命を奪う化学から、命を救う化学へ
「私は、人を殺すためじゃなくて、生かすために知識を使いたい」
サリヴァンのこの言葉は、まさに物語の転換点でした。
“呪いの森”という閉ざされた空間から脱出する決意を固めるとき、彼女の中に生まれたのは、“贖罪”ではなく“未来への意思”でした。
科学は脅威にもなる、だが希望にもなる。彼女の選択が、それを証明するのです。
ディーデリヒの救援と“人狼の森”の真実
シエルが絶体絶命の危機に陥った瞬間、現れたのは父の親友ディーデリヒでした。
その登場は、ただの救援ではなく、“過去と現在が交差する決定的な瞬間”だったと私は感じています。
そして彼の口から語られる「人狼の森」の真実は、まさに“幻想の破壊”ともいえる衝撃をもたらしました。
「人狼」や「魔女」の正体は軍事プロパガンダ
長年村人たちが信じてきた“呪い”や“魔法”は、実は軍によって仕組まれたカモフラージュでした。
“人狼”はガスマスクを被った兵士たち、“呪いの瘴気”は毒ガス――つまり、森は巨大な兵器実験場だったというのです。
この冷徹な真実に、私は“幻想の美しさ”と“現実の醜さ”の境界線を見た気がしました。
“緑の魔女”とは誰だったのか?
では、森を守る“魔女”とは何者だったのか。
それは毒ガスを操って森を覆った、サリヴァンの母、そしてサリヴァン自身である可能性に辿り着きます。
神話の裏には、いつも誰かの悲しい真実が潜んでいる。その構造に深く胸を突かれました。
サリヴァンの覚醒と「サリン」の真実
物語はサリヴァンという少女に再び焦点を当て、“科学の天才”としての彼女の才能と苦悩が鮮明に描かれていきます。
今回のエピソードは、彼女の“目覚め”の瞬間とその決断に、私自身も深く心を揺さぶられました。
それは、「人を殺す力」と「人を救う力」の境界に立つサリヴァンの内なる闘いでもありました。
彼女が生み出していたものは“サリン”
驚愕すべきことに、サリヴァンが無邪気に生み出していたのは、化学兵器「サリン」の試作品でした。
その事実を知った瞬間、サリヴァンは自分が人殺しに加担していたのではと深く苦悩します。
“天才であることが罪になることもある”――そんなテーマが、このエピソードには流れているように思えました。
「私は薬を作る人間になる」
サリヴァンは兵器の研究者ではなく、人を救う治療薬の開発者として生きる道を選びます。
「薬を作ってみせる」という彼女の言葉には、絶望からの再出発という強い意志が込められていました。
私はこの選択こそが、“黒執事”という作品が伝えようとしている本質の一つではないかと感じています。
脱出と“サリン”封印の決断
第10話のクライマックスでは、ついにシエルたちが森からの脱出に成功します。
しかし、これはただのエスケープではなく、“過去の罪とどう向き合うか”という命題に対する回答でもありました。
ディーデリヒの助けとサリヴァンの覚悟が交錯する瞬間に、私は胸が熱くなりました。
サリンを葬る決意とシエルの判断
シエルは、女王には毒ガス「マスタードガス」の報告だけを行い、より危険な「サリン」の存在は伏せる判断をします。
「誰も幸せにならないものは、世に出すべきではない」――そう語る彼の姿には、“英国女王の番犬”としての矜持と優しさが同居していました。
セバスチャンによってサリンは深海に沈められ、この世から完全に封印されます。
サリヴァンに与えられた新たな人生
サリヴァンは女王に招かれ、今後の研究に対する庇護と支援を得ることに。
かつて“毒”を生み出した才能が、今度は“命を救う”希望の光に変わろうとしています。
「その執事、掃討」――このタイトルには、呪いと罪を葬り去るという意味が込められていたのかもしれません。
緑の魔女編、終幕と新たな希望
第10話「その執事、掃討」は、“緑の魔女編”の結末を描くにふさわしい濃密なエピソードでした。
物語は毒と呪い、そして過去の罪を葬り去りながらも、未来への希望の光を紡ぎ出す静かな感動に包まれます。
私はラストカットのサリヴァンの表情に、「生きる意志」を見ました。
人を生かす才能へと転換された科学
かつて「兵器開発」という形で利用されていたサリヴァンの頭脳。
しかし今や彼女は、「人を救う薬」を作るためにその知を注ごうとしています。
これは単なる贖罪ではなく、世界に新たな価値をもたらす“再生”の物語でした。
シエルとセバスチャンの決断に見る哲学
“必要悪”としての毒を扱う立場にありながら、サリンを葬り去る決断をしたシエル。
その背後には、「力は必ずしも人を幸せにしない」という哲学が透けて見えます。
それを実行に移すセバスチャンの存在もまた、「執事としての誇り」そのものでした。
- 呪いの正体はマスタードガスだった
- サリヴァンはサリンを作っていた
- 彼女は治療薬開発の道を選ぶ
- ディーデリヒの救援で森を脱出
- サリンは深海に封印される
- シエルは真実の一部を伏せ報告
- 女王の庇護でサリヴァンは再出発
- 黒執事らしい哲学と希望が交錯
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